「聴く力道場」が始まると知って、ピクッと反応した自分がいました。
道場という響きに興味を覚え、聴く/傾聴のお稽古ってどんな感じだろう? セルフコーチングとして聴き合う「みちみち会」とどんなふうに違うんだろう? と想像しました。
一方で、“そんな真剣(そう)な場に行っていいのかな?”とも思いました。傾聴をある程度極めた人がさらにストイックに精進する場というイメージが浮かんできたからです。
大きく背中を押してくれたのは、葉山の「星山」での開催という点。
自然のなかで聴いたり聴かれたりするなんて、とてもリラックスして臨めるんじゃないか、そして、日常とは違う景色に身を置いてみたいという気持ちが湧いてきました。「星山」への興味が大きく膨らんできて、よし! と参加を決めたのでした。
たどり着いた星山は、人の活動と休息の両方の場を持つ、丁寧に手入れされた里山でした。多彩な木々や植物に囲まれ、こんもりした自然がありながら、人の息遣いも共にある感じです。
土の上で、ゲルの周囲のウッドデッキで、ペアになっての身体ワーク。相手と交流しながら、エネルギーが外に向かって膨らんだり循環したりするのを感じます。これは遊び!? とみんなの笑い声が響きます。身体も温まってほぐれてくる。“相手がいたから、導かれて、こんな意外な動きをしたのかな?”と発見する瞬間もありました。
身体ワークの後の「ひとり時間」では、マットを持って、各人思い思いの場所に移動して過ごします。青空を浴びたかったこの日の私は、ここだ!というポイントを決めてごろり。雲がいろんな形になって流れていくのをただずっと眺めていました。さっきまで空に放たれて巡っていたエネルギーが、こんどはすーっと自分の内に入って落ち着いていく。そんな感覚を覚えました。
道場の始まりもそうでしたが、「ひとり時間」終了時も、あきらさんの吹く法螺貝の音が響きます。ブザーやチャイムみたいな音とは全然違う、風に乗って周囲の自然となじむ心地よい音です。
椅子に座り、傾聴実践の時間が始まりました。ペアを組み、テーマが示されて“まとまらない話推奨”で進みます。今回は“ちょっと気分が上がったこと”逆に“ちょっと落ちたこと”の2ラウンド。ホントにまとまらない話でいいのかなぁ〜と思うけど、話し終えてみると、その場で浮かんだ話のほうが、楽しかったなと感じました。もう片方のテーマは、一度自分でも咀嚼してみた出来事だったからか、説明っぽい話になっちゃったかも。“まとまらない話”に垣間見える相手の感情、自分の思い。それが伝わり合う。面白いなぁ。
最後は、焚き火の時間。
火を囲んで、食べたり飲んだり、それぞれのタイミングで言葉を発したり。そしてただ黙って炎を眺めていると、心のなかで何かが溶けて無になっていくようです。
ゆたかな音、匂い、肌触りのある自然のなかで、ペアの相手の輪郭も周りの空気をまとって、弾力がある感じだったなぁ。生きてる者同士のやりとり、一回一回の傾聴もひっくるめて生き物、その都度違うんだ。その時揺れた、動いた感情を味わいながら聴いていくんだ……。ゆらゆらとさまざまに姿を変える火を見つめながら、そんなことが浮かんできました。
すっかり夜空になった星山で、「聴く力道場」の一日目が終わりました。
聴く力道場についてはコチラ