「聴く力道場」、屋外で開催される初日。

向かうは葉山の「星山」。

青空がまぶしく、風そよぐ春の日。

現地までの行程は、ちょっとした旅気分です。

お昼に集合して、傾聴のミニレクチャー・いくつかの身体ワーク・傾聴実践と進み、最後は焚き火の一日でした。

なかでも心に残っているのは、時間にしてほんの5分くらいの身体ワーク「ブラインドウォーク」です。

ペアを組み、一人が目を閉じて、歩いたり立ち止まったり、好きに動く。もう一人(パートナー)はその動きに寄り添っていく。

それ以上進むと危ないよ、という時は、そっと腕や肩に触れて、さりげなく方向転換を促して回避する。

その間中、お互いに言葉は交わさない(!)というルールです。

目を閉じる番になると、手は空を泳ぎ、サクサク、バキバキと足元から立ち上る音と足裏の感覚を頼りに、ゆっくり探るように進みます。

正直、ちょっと怖い。

さっきまで見えていた景色の記憶が頼りにならないことを痛感します。

“ここは坂道……次は階段かな? 他のペアの足音がすごく近い……ぶつかる?”

とその時、すっと柔らかく押しとどめるパートナーの手が触れました。

“あ、見ていてくれる人がいるんだった……!”

ほっと安心し、気持ちが落ち着きました。

よし大丈夫だという気分が生まれ、足の運びも変わってきます。

“急な斜面だな……真ん前に何かある……竹か”

ぐっと幹を握って体を押し上げたところで「はい、そこまで」の合図があり、ブラインドウォーク終了。

すると、“竹の間を縫って、狭い斜面を登ってたの!?”と予想もしなかった景色を目にして、びっくり!! 

パートナーと二人、思わず大笑いしました。

そこには、面白いね、やったね!というお互いの喜びがありました。

ワークを終えてしばらくしてから、あっ、と気づきました。

あのルートを目を閉じながら切り抜けられたのは、自分の無鉄砲な勇気からじゃないな。

そばで見守り、時に支えてくれたパートナーのおかげなんじゃないかな? 

声を出せないなかで姿勢で示してくれたことで、安心しながら、力を得て進むことができたんだ!……そう思い返すと、それこそが、傾聴の姿勢・傾聴のあり方に通じるんだ、とすっと腑に落ちました。

レクチャーで教わり聞くだけでなく、実際に身体を動かすことで、そして相手(他者)がいることで、深く体感できた貴重なことでした。

帰宅してからもこのワークの思い出が強く、私にとって、星山での「聴く力道場」の一日は、この瞬間に凝縮しているなぁと感じています。

異なる季節に二度訪れたことがあった星山。

同じ場所でも、木々の様子も、咲いている花も空気の匂いも音も違いました。

その時々、変化していて、その時だけの時間と機会であることも、心に沁みました。

傾聴もきっとそう。

お互い生き物で、一回一回その時だけのものなんだ。

大切なことを感じとることができました。

ありがとうございます。